eポートフォリオ2.0

初等中等教育では、新学習指導要領が実施され、基礎・基本的な知識・技能を習得し、それらを活用して課題を 解決するために必要な思考力・判断力・表現力などの能力をはぐくむとともに、学習意欲の向上と学習習慣を確立 させることが求められています。

これらを育成するには、eポートフォリオシステムが有効ですが、既存のeポートフォリオシステムは、小・中・ 高等学校での利用に適しているとは言えません。

東京学芸大学の森本康彦教授は、「教育ビッグデータ」時代に求められる新しいコンセプトとして、 「eポートフォリオ2.0」を提案されています。

新時代の「eポートフォリオ2.0」とは[1]

1) 学習者中心

学習者が主体的に学ぶプロセスを支援し、継続的な成長を促す。

2) あらゆる学びのツールとなる

学習者の学びのための様々な活動を行うためのツールとなる。授業や実習などの正課内の活動(フォーマルな学び)だけでなく、家庭学習や課外活動などの正課外の活動(インフォーマルな学び)も同様に対象とし、eポートフォリオシステムの機能に学習者の活動を合わせるのではなく、学習者の活動を行う手段としてeポートフォリオシステムを用いる。

3) いつでも、どこでも

ネットワークに接続された情報携帯端末を必携し、いつでも、どこでも、継続的に利活用する。

4) 学習習慣の確立

学びのプロセスにおいて、eポートフォリオを習慣化して利活用できるようにすることで、学習者毎の学びのルーティンを形成する。これにより、学びに関係のない余計な負担をなくし無意識化することで、学びのバイアスを取り除き、学習習慣の確立を促し、学習意欲の向上につながる。

5) 学習記録データを柔軟かつ密に記録する

リレーショナルデータベース(RDB)による、既定の項目に対応するデータのみをトランザクション単位で管理するのではなく、ビッグデータを活かすデータベース技術、例えばNoSQLを用い、近年のSNS等のデータ蓄積の最新技術を採用することで、学習記録データを柔軟かつ綿密に蓄積する。

6) 教育コミュニティの形成

学習者自身が、自己調整しながら学びを進めるとともに、学習者同士での学び合い(相互評価)、教師からのフィードバック(教師評価)、保護者や他の専門家等からのコメント(他者評価)を受け、協働的な学びに参加する。

7) 学びの見える化

蓄積された学習記録データを分析(Learning Analytics)し、学びのプロセスにおける状況や推測をリアルタイムに学習者に見える化して、ダッシュボードに提示することで、各学習者のモチベーションを高め、自己調整やショーケース作成の足場となる。

8) 教育ビックデータの構築

各学習者で蓄積された記録データが、各人の学びに活かされるとともに、それらデータを集結することで教育ビッグデータとして扱うことができる。

[1]Morimoto, Y. & Suzuki, K. (2015). E-portfolio Framework for Collecting and Using K-12 Student Learning Records with Tablet Devices.
  In Proceedings of Global Learn 2015 (pp. 43-52). Association for the Advancement of Computing in Education (AACE).

森本 康彦 氏(もりもと やすひこ)

東京学芸大学 情報処理センター 教授、博士(工学)。
1991年 三菱電機株式会社 情報技術総合研究所にて基本ソフトウェアの開発に従事。1996年 広島市立牛田中学校 教諭 (数学)、2004年 千葉学芸高等学校 教諭(情報)。その後、富士常葉大学 教授を経て、2009年東京学芸大学教授 (現在に至る)。2007年 長岡技術科学大学大学院修了、博士(工学)。初等中等教育・高等教育の教員、システム開発 エンジニア、教育工学研究者の経験を生かし、「教育現場」「システム開発」「学術的研究」の三点を繋げることで、 新しい時代の教育の形を創っていきたいと考えている。教育工学(特に、eポートフォリオ、eラーニング、ICT活用教育)を専門とする。